Featured Post

資金調達の相談先はどこ? 投資や融資など相談員が解説

はじめに 事業の立上、運転、発展、あるいは再生といった活動に際し、資金調達は欠かせないものです。しかしそのハードルは高く、熟練の経営者やCFO(Chief Financial Officer / 財務最高責任者)にとってさえ簡単ではありません。 本稿では資金調達のベテラン相談...

Saturday, August 24, 2024

資金調達の相談先はどこ? 投資や融資など相談員が解説

はじめに

事業の立上、運転、発展、あるいは再生といった活動に際し、資金調達は欠かせないものです。しかしそのハードルは高く、熟練の経営者やCFO(Chief Financial Officer / 財務最高責任者)にとってさえ簡単ではありません。
本稿では資金調達のベテラン相談員が、資金調達の種類、資金調達の流れ、また困った際の相談先などについて、事例を踏まえながら解説します。

目次

  1. なぜ資金調達に相談が必要か?
  2. 資金調達の種類
    1. 投資(エクイティファイナンス)
    2. 融資(デットファイナンス)
    3. 助成金・補助金
    4. ファクタリング
    5. M&A
    6. IPO
    7. IEO
    8. 社債
    9. クラウドファンディング
  3. 資金調達の流れ
    1. 経営・事業目標の仮決め
    2. 第3者との壁打
    3. 事業計画書類の作成
    4. 資金調達先へのアタック
    5. 申請書類の提出、および契約
    6. 後処理、着金、定期報告
  4. 相談窓口の種類
    1. 総合系
    2. 投資系
    3. 融資系
  5. お悩み相談事例
    1. 相談事例① はじめの独立で資金繰りをどう考えるべきか分からない
    2. 相談事例② 投資での調達でVCや投資家との話合いがうまくいかない
    3. 相談事例③ IPOに向けて財務面をどう進めていくべきかわからない
  6. 困ったらここに相談

1. なぜ資金調達に相談が必要か?

一般的に、資金調達は経営者様の責務で、またそれを通して経営者様ご自身が成長することが必須とされてまいりました。
それ自体はその通りなのですが、例えばプロのアーティストやスポーツ選手であったとしても、傍には信頼できるコーチがいて、科学的な方法でトレーニングを行い、また様々なコンテンツから知識や技術を習得していくことでより効率的に成長するものでしょう。
資金調達も同様で、最終的にご自身で為されるにせよ、心強い相談先があることはプラスにはなれどマイナスにはなりません。
また経営者様の本来の仕事は戦略的な判断をすることです。何事も内容は理解しつつも、本質的でない作業に時間を取られてしまわないよう、常に誰かに相談しながら進めることが大事です。


2. 資金調達の種類

古来より事業を営むにあたっては資金調達が必須であり、その手法として様々なものが発明されてまいりました。ここでは現代において主たる資金調達方法の種類を、そのメリットやデメリットも踏まえて解説します。

投資(エクイティファイナンス)

自社の株式と交換に資金調達をする方法で、ここではVCなどの特定の第三者に株を発行し資金調達をする方法を主眼に解説します。 細かくは株主割当増資、第三者割当増資、公募増資、転換社債型新株予約権付社債などの方式があります。

調達可能額
数百万円~数十億円

対象者
スタートアップ(ベンチャー企業)
中小企業
大企業

調達先
VC(ベンチャーキャピタル)
CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)
PE(プライベートエクイティファンド)
エンジェル投資家(個人投資家)
事業会社(直接的な事業投資)

特徴
返済の必要がない点が最大の特徴です。また自己資本が増加し財務体質がよくなったり、株主を通して新たな人脈作りなども可能です。

留意
株の持主が増えるため、多量に分散すると経営権が希薄化していくことになります。また力を持った株主からの干渉が増える場合があります。

時間
方式や状況によりますが、一般的には数ヵ月程度かかります。

費用
株を発行する際の会計や法務面の対応、調達先への広報活動、株の発行手数料といった費用が発生します。

 

融資(デットファイナンス)

銀行等からの借入により資金調達をする方法です。公的融資、銀行融資、ビジネスローン(ノンバンク)などがあります。以前は会社破綻等に備えて経営者が保証人になることが必須なケースが多かったですが、昨今では中小企業でも経営者による保証が不要の場合も増えてきました。

調達可能額
数十万円~数十億円

対象者
個人事業主
スタートアップ
中小企業
大企業

調達先
政府・公的機関(日本政策金融公庫など)
銀行系(メガバンク・地銀・信用金庫など)
ノンバンク(消費者金融、クレジットカード会社など)

特徴
株と異なり経営権の希薄化がない点が特徴です。また利息は経費算入できるため節税効果があるとされています。

留意
元本の返済に加えて利息を支払う必要があります。また負債となるため自己資本比率の低下といった財務影響があります。

時間
小額であれば数日、金額が大きい場合2-3ヵ月以上かかる場合があります。

費用
利息、手数料、保証料といった費用が発生します。

 

助成金・補助金

官公庁や自治体が提供している助成金・補助金により資金調達する方法です。助成金は主に雇用や労働改善を目的としたものが多く、基本的に条件に合えば承認されます。補助金は新規事業、研究開発、地域振興などを目的としたものが多く、基本的な条件に加えて審査が入る場合が多くなっています。

調達可能額
数万円~数千万円

対象者
個人事業主
スタートアップ
中小企業
大企業

調達先
国(厚生労働省、経済産業省など)
地方自治体(都道府県、市区町村など)

特徴
返済義務がないため資金調達におけるリスクがありません。また得られた助成金・補助金によっては企業の信用が向上する場合もあります。

留意
手続きが比較的煩雑で、またキャッシュとして受給できるまで時間がかかる場合があります。補助金に関しては競争率が高く、受給できない場合があります。

時間
申請自体が特定の期間しか募集していないものがあり、またキャッシュとして受け取れるまでには数ヵ月から1年程度かかる場合があります。

費用
申請手数料、事務処理費用などが発生します。

 

ファクタリング

売掛債権をファクタリング会社に売却することにより、早期にキャッシュ化して資金調達する方法です。債権者とファクタリング会社間のみで契約する2者間ファクタリングと、債権者、債務者、ファクタリング会社の間で契約する3者間ファクタリングがあります。

調達可能額
数万円~数千万円

対象者
個人事業主
スタートアップ
中小企業
大企業

調達先
ファクタリング会社
ファクタリングを提供している銀行やノンバンクなど

特徴
売掛債権を即日から数日で現金化をすることができます。債務者の信用力が重視されるため、現金化をしたい債権者側の信用力はあまり関係ありません。また担保や保証人なども不要です。

留意
ファクタリングの利用が債務者側に通知される場合があります。また利用には書類の準備や手続きが必要となります。

時間
即日から数日で現金化できます。

費用
手数料、事務処理費用などが発生します。

 

M&A

事業の全部または一部を売却することにより資金調達をする方法です。合併するイメージが強いですが、全ての株を売却しても会社やブランドとしては存続したり、一部事業のみを売却して元の会社は残す方法などもあります。

調達可能額
数百万~数千億円

対象者
スタートアップ
中小企業
大企業

調達先
事業会社(直接)
M&A仲介会社の紹介 買収目的のファンド

特徴
売却することで多額の資金を得るに加えて、グループ会社化・合併により買収した企業側のリソースを活用してより事業を加速したり、シナジーを創出したりすることができる場合があります。

留意
買収した側の方針により、元会社のブランドが完全消滅したり、人員の整理が行われる場合があります。また売却後の経営統合(PMI:Post Marger Integration)がうまくいかないといったリスクがあります。

時間
一般的には1年程度かかることが多いとされています。

費用
基本的に買収する側が費用を出すため、売却側はそれほどありません。売却に至るまで会計や法務面、また株式譲渡の事務費用などが発生します。

 

IPO

株を証券取引所に上場させることで資金調達をする方法です。上場した株は機関投資家も一般投資家も購入することが可能で、大きな資金を得られます。

調達可能額
数億円~数千億円

対象者
スタートアップ
中小企業
大企業

調達先
機関投資家
一般投資家

特徴
多額の資金調達が可能な点が最大の魅力です。また上場により知名度と信用も向上します。

留意
上場に向けては審査をクリアするための内部統制の整備や外部監査などが必要で、時間とコストが多くかかります。また広く公開することから株主に対する対応も必要になります。敵対的買収といったリスクも発生します。

時間
通常は準備をはじめてから上場するまで2~3年程度必要になります。

費用
審査基準に則った人事、会計、法務などの社内整備、新株発行や上場に関わる手数料、投資家への広報活動費用などが発生します。

 

IEO

近年事例が増えてきた方法で、自社が発行した暗号資産(トークン)を暗号資産取引所に上場させることで資金調達をします。IPOに似ており、上場した暗号資産を機関投資家や一般投資家が購入することができます。

調達可能額
数億円~数十億円

対象者
スタートアップ
大企業

調達先
機関投資家
一般投資家

特徴
暗号資産の上場により多額の資金を調達できる場合があります。また上場により信用が向上する場合があります。

留意
IPOと比較し、取引所に支払う手数料が高額になる場合があります。またそもそものトークン設計が難しかったり、審査が比較的厳しいといったハードルがあります。

時間
すでにトークンを設計済みで発行の目途が立っている場合は、1年以内に上場できる可能性があります。

費用
会計や法務面の対応、投資家への広報活動、取引所への手数料といった費用が発生します。

 

社債

自社の債券を発行することで、銀行や投資家から資金調達をする方法です。債券と引換に資金を借入れるかたちとなり、利息を支払いつつ満期時に元本を返済します。

調達可能額
数億円~数百億円

対象者
中小企業
大企業

調達先
銀行
機関投資家
一般投資家

特徴
債券のため経営権の希薄化がありません。また調達時にコストが確定しているため資金計画が立て易いのも特徴です。利息は経費算入できるため、節税効果もあるとされています。

留意
一般的な融資と同様、元本の返済と利息の支払いがあります。また発行に至る手続きが比較的煩雑です。

時間
1年以内に発行できる場合が多くなっています。

費用
会計や法務面の対応、投資家向けの広報活動、社債の発行手数料といった費用が発生します。

 

クラウドファンディング

インターネットを通して不特定多数から資金調達をする方法です。資金調達の対価として差し出すものによって、寄付型、購入型、投資型、融資型があります。

調達可能額
数十万円~数億円

対象者
個人事業主
スタートアップ
中小企業

調達先
一般投資家

特徴
比較的手軽に資金調達できます。またプロジェクトの発足によりマーケティング効果を得られる場合があります。その結果、支援者が同事業のファンになる場合もあります。

留意
目標の調達金額に達成できるか読めない部分があります。またプロジェクトの準備や運営に一定の手間がかかる場合があります。リターンの提供にも手間やコストが掛かる場合があります。

時間
準備期間を含めて数ヵ月程度になる場合が多くなっています。

費用
発足したプロジェクトの広報活動、プラットフォーム手数料、リターンのコストなどが発生します。

 



3. 資金調達の流れ


資金調達は採用する方式によって詳細の流れが変わりますが、大きな流れは共通している部分が多くなっています。 それを踏まえ、ここでは典型的な資金調達の流れについてご説明します。

Step 1) 経営・事業目標の仮決め


まず最初に、今後の経営・事業の目標を仮決めしましょう。例えば5年後までに売上10億円を目指す、IPOを目指す、というようなマイルストーンや、その時の顧客数はどれぐらいで、それはどんな人達で、その時に人員はどれぐらい必要か、といったKPIなどを検討します。またさらに、そこに至るまではどのような活動をしていくべきかもイメージします。これらは一定決めの問題になりますので、自分がどうされたいか、他社事例やこれまでの経験を踏まえるとどれくらいになりそうかなど、感覚も頼りにしながらご検討されるのがよいかと思います。

Step 2) 第3者との壁打


経営・事業の目標や活動内容を仮決めしたら、詳細の資金計画を作りこんで決めてしまう前に、まずは第三者へ案を共有して意見を聞いてみましょう。これはなぜかというと、特に新規事業について考えている時、その夢から人間の脳はちょっとした興奮状態に陥るため、気を付けていても現実の市場から乖離した案を作成してしまうからです。その状態で実際の活動に入るとまず上手くいかないため、必ず冷静な第三者からの意見を聞きましょう。この時お話しする相手は、同じ業界に詳しい経営者、あるいは常日頃から様々な資金調達を手掛けている専門の相談員が良いとされます。なお、相談相手の意見をすべて鵜呑みにする必要はなく、冷静な意見と受け止めつつも、最後は自分の意志で判断するで問題ありません。

Step 3) 事業計画書類の作成


第三者からの意見も踏まえ経営・事業の方向性を決めたら、自ずと適した資金調達方法も見えてきます。そこで次の段階では、調達先含む様々な関係者に説明をしていくための、いわゆる事業計画書を作成します。 事業計画書は、大きくは事業概要説明資料と、財務系資料に分かれます。

事業概要説明資料:
  • 会社概要・沿革
  • 代表・メンバー紹介
  • マーケットトレンド・規模・狙いどころ
  • ビジョン・ミッション・バリューステートメント
  • 商品・サービス概要
  • マーケティング・営業戦略
  • 財務目標・KPI概要
  • 組織・人員戦略
  • 資金調達戦略の概要
  • クロージングメッセージ
  • 必要に応じて他
財務系資料:
  • 目標の損益計算書(P/L)
  • 目標の貸借対照表(B/S)
  • 目標のキャッシュフロー計算書(C/F)、または資金繰り表
  • 目標の資本政策
  • 過去の決算書
  • 必要に応じて他
事業計画書は調達先の関心事に合わせて作成することが重要です。例えば新規事業で投資を受けようとする場合、先の予測が立てづらく困難も多いことから、投資家やキャピタリストはその経営者の経歴や信念をとても重視します。一方、融資において銀行に相談する場合は、金利と共にきちんと返済がなされるかが最も重視されるため、財務系資料を作りこむことが重要になります。

Step 4) 資金調達先へのアタック


事業計画書を作成したら、調達先候補をリストアップして相談を開始しましょう。調達先候補のリストアップではその調達方法によって必要社数が大きく変わります。例えばはじめてVCなどから投資による調達を受けようとした場合、40社程度は相談することが必要と言われています。一方で公的機関や銀行等から創業融資を受けようとした場合は、それ専用のプログラムを提供している数社程度に相談すれば十分だと考えられます。

Step 5) 申込書類の提出、および契約


調達先候補と何度か相談して資金提供の内示を受けたら、審査のための必要書類を提出したり、契約の締結をしたりします。調達方法によって契約書のみで済む場合もあれば、銀行等であれば申込書、追加の債務情報、実取引の証憑など、複数の書類を求められる場合があります。

Step 6) 後処理、着金、定期報告


契約ができたら着金を待ち、また後処理を行います。ここで言う後処理とは、投資であれば株式の発行手続き、クラウドファンディングであればリターンの送付などが挙げられます。また投資家やVCから資金調達をした場合は、その後の進捗報告を定期的に求められる場合があります。



4. 相談窓口の種類

資金調達に関る活動はその難易度や複雑さから、全国各所に相談できる窓口が存在します。多数の種類の資金調達を取扱う総合系の窓口、投資関連のみを取扱う窓口、融資関連のみを取扱う窓口など、複数の種類があります。

総合系

投資や融資といった方式に関わらず様々な相談に乗れる総合的な窓口になります。資金調達は自社のニーズに合った方式を選択したり複合的に利用したりするものなため、まず最初はこちらにご相談することをおすすめします。

総合系の資金調達支援事業者:
投資、融資、助成金・補助金、IPO準備など、あらゆる資金調達の支援サービスを提供しています。会員登録などは不要で、一般的な質問等であれば無料で相談に乗ってくれます。

中小企業基盤整備機構:
経産省管轄の独立法人である中小企業基盤整備機構は、中小企業の経営に関する様々な情報提供やホットラインなどのサービスを提供しています。メールでの相談なども受け付けています。

商工会議所:
経産省管轄の商工会議所は、個人事業主や中小企業向けの経営相談、融資の斡旋、助成金・補助金の申請支援などを行っています。サービス提供を受けるためには会員になる必要があります。

投資系

投資による資金調達の相談は、主にVC(ベンチャーキャピタル)が窓口となって様々な情報提供をしてくれます。実際に投資による調達を行う場合には、他の投資家なども含めて調整を行うリード投資家としても活動してもらえる場合があります。ベンチャーキャピタルは独立系と非独立系を合わせ全国に300社以上あると言われております。

融資系

融資による資金調達の相談は、政府・公的機関系、都市銀行・地方銀行・信用金庫などの銀行系、ノンバンク系などがそれぞれ窓口を用意しています。中でも最も金利が安く頼りになるのが日本政策金融公庫で、個人事業主、スタートアップ、中小企業の融資ではまず最初に相談する先と言われております。



5. お悩み相談事例

ここでは、相談員に寄せられる典型的なお悩み事をいくつかご紹介します。

 相談事例① はじめの独立で資金繰りをどう考えるべきか分からない


ご相談内容:

これまでITコンサルタントとして働いてきており、独立して自社サービスを作っていきたいと考えています。しかし自社サービスを開発していくためにはエンジニア等を雇う多額の資金が必要で、またサービスをリリースしてもすぐに黒字にはならないかもしれないので、その間も会社を存続させ生活していくために、資金繰りを考えなければいけません。このような場合、特に創業期から事業が安定するまで、他の経営者様達はどのようにしてきているのでしょうか?

ご回答内容:

創業時と、一定サービスの開発が進んだ時で、分けて考えると良いと思います。
まずは創業時ですが、実はこの時点における資金繰りの選択肢はそれほど多くはありません。ずはり「自己資金」「先に別の仕事で利益を立てる」「創業融資」の三択です。
自己資金とはその名の通り、それまで自分で貯めてきた貯蓄です。しかし自己資金だけでしばらく賄えることができるケースは稀でしょう。
そこで次の選択肢が先に別の仕事で利益を立てることです。これは、例えばこれまで会社勤めでやってきたことを、今度は自分で他社から請負い、それで日銭を稼いでいくというやり方です。このやり方はリスクが少なく、また元々ITコンサルタントなどをされていた方であれば、仕事を紹介してくれるエージェントはたくさんいます。一方、日々の生活費を稼ぎながら開発資金を貯めるには相当の時間が必要になります。別の仕事をしながら設計開発をするといった形となるため、とれる時間は限られてくるでしょう。
そこで次の選択肢が創業融資の活用となります。その方の信用にもよりますが、創業融資では概ね500万~2,000万円程度を比較的容易に調達可能です。日々の元本返済と金利の支払は必要となりますが、調達した資金を活用して人を雇って時間を作ったりすることで、比較的早期にサービスを形作っていくことができます。
その後、一定程度サービスが形作られてきたら、VCやエンジェル投資家からの資金調達がし易くなってきます。実は最初からVCやエンジェル投資家に行く方法もなくはないですが、その段階ではサービスの形が見えておらず、投資する側も自信をもっての参画がし辛い状況になります。そのため一定程度形が作られてからの方が、投資による調達がし易くなります。
一度投資による資金調達ができたら、その後はサービスが順調に成長していけばより資金調達がし易くなります。こういった形で資金を繋ぎながら、黒字化を目指していくと良いでしょう。


 相談事例② 投資での調達でVCや投資家との話合いがうまくいかない


ご相談内容:

自社でSaaS系の新規サービスを開発しており、資金調達のためVCに相談しているのですが、厳しい言葉をもらって上手くいきません。説明資料には一般的に事業計画で必要とされる内容をすべて書き込んでいるのですが、この事業の良さや採算性などあまり理解が得られていない様子です。私はこれまで、事業会社やコンサルティング会社で何度も大きな予算を獲得してきました。さらに別の経営者からもアドバイスをもらいつつ資料を改善しています。にも関わらず、何度挑んでもあまり反応は変わりません。一体何が問題なのでしょうか?

ご回答内容:

これまで事業会社などで何度も社内の案件に関わり、予算を獲得してきた方から見ると、はじめてのVC、つまりキャピタリストとのやり取りではかなりギャップを感じることでしょう。
事業会社における予算は、その会社における他サービスとの相性であったり、財務上の投資対効果によって承認されるものです。しかしVCは、売上等の目標を見はするものの、実はそれが決定打にはなりません。不確実な新規事業においてそういった数字が信頼できるか、誰も分からないためです。そのためVCの視点からより重要なのは、不確実で困難な状況においてもやり遂げる力があるかどうかになります。それに納得感を持たせるためには、どうやってビジョン・ミッション・バリューを考えたか、また常人が行わない量の何かを熱量をもってこなしたかといったところが非常に重要となります。
もし資料を改善しているにも関わらずあまり反応が変わってこない場合は、そういった点を強く出していくように改善すると上手くいく場合があります。


 相談事例③ IPOに向けて財務面をどう進めていくべきかわからない


ご相談内容:

3年度にIPOを目指したく、そのための内部統制整備や外部監査対応などを資金調達しながら進めていく方針で考えています。しかし、どのタイミングで、どういった株主構成で、どれぐらいのバリュエーションで計画を組んでいくと良いか、あまりイメージをし切れていません。一般的な知識はある程度分かっているつもりですが、本当に合理的になるよう詰めていくための専門的な知識・経験が足りていないように感じています。またそれを補うためのCFOの採用も上手くいっておりません。このような場合、どうしたらよいでしょうか?

ご回答内容:

CFOの採用が難しい場合、外部の専門家からアドバイスをもらうのが良いでしょう。ただこの時に気を付けたいのは、そのアドバイザーが事業者様側の視点に立ってご相談に乗ってくれるかどうかという点です。
というのも、IPOへ向けては幹事となる証券会社や外部監査を行うコンサル会社が既に先んじて入っいる場合があり、そういった方々も財務やIPOに詳しいので色々と教えてくれますが、あくまで自身達の役割におけるアドバイスとなるからです。それらはもちろん非常にありがたい一方で、すべてが事業者様や経営者様にとって最も利益があるものとは限りません。
こうした背景から、特にIPOという巨額の資金が関わるお話しにおいては、CFOのように事業者様の利益と相談役の利益が一致していることが望ましいことになります。総合系の資金調達支援をしている事業者であれば、実質的な外部CFOの派遣といったことも行っておりますので、そちらにご相談することをおすすめします。


6. 困ったらここに相談

経営において資金調達は最重要テーマであり、様々な困難が待ち受けています。 そうした状況に対しては、幾度も経験を重ねてきた専門的な相談員が力強い味方となるでしょう。 資金調達について何かお悩み事に遭遇したら、まずはどうかお気軽に相談してみてください。
著者:土屋 敬悟 (Chief Executive Officer / DSDS Inc.)